下流老人

ご存知の方も多いと思いますが、藤田さんの書かれた下流老人を読みました。

下流老人とは、生活保護基準相当で暮らす高齢者及びその恐れがある高齢者と定義されています。


下流老人の具体的な指標として、

①収入が著しく少ない

②十分な貯蓄がない

③頼れる人間がいない(社会的孤立)


下流老人の現実として4人の方のケースがのっています。

ケース1の方は40代に両親が相次いで病気になり介護が必要となり正社員を辞め、看病し両親を看取りました。50代半ばとなり、預金は500万円ぐらいあり、介護の仕事をしながら年金受給の年となりました。

年金加入年数の少なさもあり9万円の年金にこんなに少ないと思わなかったそうです。

その後、糖尿病がみつかったり、腰痛で動けないなど医療費もかかるようになりました。NPOに相談に来られたときは、野草を食べたり、ホームレス専用の炊き出しの列に並んだりしたそうです。


ケース2の方は、うつ病の娘さんを支えながら厚生年金の17万円で親子3人で生活されています。ブラック企業や引きこもり、うつ病など、若者をめぐる問題で想定外の家族の病気などで生活困窮となるということです。


ケース3は、40年間事務員として働き、退職間際の年収は500万程度あり、退職金も1500万円あり、貯金をあわせると3000万円あり老後は安泰だと思っていたそうです。独身で、せめてお墓は自分で用意しようと900万円使って墓石と墓地を購入しました。ところが、退職後、心筋梗塞を2度起こし長期の入院となり、7年間で3000万円が無くなりました。ただ高額療養費助成制度など知らず使っていないそうです。

また、厚生年金に加入していませんでした。


ケース4は、銀行員として61歳まで働き、娘さんも結婚して家をでています。このケースは若年性認知症の傾向があったようで、妻と離婚し60代で月額12万円の厚生年金で1人暮らしとなりました。この方が下流化した大きな要因は自分も周囲も認知症に気づかず生活を続けてしまったことです。

一般に高給取りとされる銀行員であっても、いくつかの問題を契機に下流化してしまうということです。


これを読み、誰もが下流老人になり得る可能性はあると思いました。


社会保障制度や福祉制度はあっても、支援施策のほぼすべてが申請主義により、本人が窓口で手続きをしないと利用できないというものです。


国は、社会福祉制度について積極的に国民に知らせたりせず、ホームページをみれば書いてあるというが、ITリテラシーの高い高齢者がどれぐらいいるでしょうか。


元気なうちから医療制度(高額療養費助成制度、無料低額診療施設など)、介護保険制度、などなど情報を集めておくこと。

また、ある程度プライドを捨て、自分から問題の把握や解決について考え、上手に支援を受けることが大切だと思います。


来月の市民講座で、このようなこともわかりやすくお伝えしたいと思います。

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コメント: 4
  • #1

    高坂 (木曜日, 20 8月 2015 09:26)

    本当に分かり易い誰でもその可能性がある例話ですね。

    こんな話を含めた講義なら皆さん引き付けられるでしょうね。

    私も今「人間の分際」曽根綾子著 NHKの「老後破産 長寿と言う悪夢」を読もうとしています。

  • #2

    かばちゃん (木曜日, 20 8月 2015 14:33)

    高坂様、コメントありがとうございます。
    長生きのリスクを考え、生活設計しないといけないですよね。

  • #3

    北村 (火曜日, 29 9月 2015 14:47)

    私も社会福祉士です。過去に高齢者施設の生活相談員をしていました。現実のほとんどは、その通りです。特に独居の高齢者は周りが気付くまでに時間がかかり、体力の低下、認知の進行、高額のお金をだまし取られたりなどなど。社会保障制度や福祉制度は申請主義、私達でも理解出来難いものが、高齢者はもっと困難です。自分の未来のためにできることから、考えていきたいと思います。「下流老人」を読んでみます。

  • #4

    かばちゃん (火曜日, 29 9月 2015 16:40)

    北村様、コメントありがとうございます。
    おっしゃるとおり高齢者自身が制度を調べて申請することは難しいですよね。
    私も微力ながら必要な方に必要な制度が届くように頑張りたいと思っています。
    下流老人を読まれた感想をいただければありがたいです。
    これからもよろしくお願いいたします。